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ページの奥、暗さの中に隠れているものは…?「もりのなか」 *大人が読みたい名作絵本*

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木が二本、寄り添って林。三本ぎゅう詰めになって森…というのが漢字の構造ですが、実際に私たちが思い描く「森」のイメージは、自然の豊かさが感じられる反面、木々が密集するその奥には、何か人智の及ばない不思議なものがうごめいている…という、ちょっと怖いようなものがありますね。

この自然の豊かさ(楽しさ、面白さ)と得体のしれない怖さとを、微妙なバランスで表現した名作絵本がマリー・ホール・エッツの「もりのなか」です。

小さな「ぼく」は、新しいラッパを持って森の中へ散歩に出ます。らいおん、ぞう、奇妙な動物たちがどんどんと行列に加わっていくのですが…?

ローラ・インガルス・ワイルダーの「大きな森の小さな家」で有名な、ウィスコンシン州で生まれ育ったこともあり、著者の「森」の表現は非常に秀でています。日本の森とはかなり違い、日中でも暗いほどに高い木々の葉が生い茂っているのですが、その「暗さ」をモノトーンで効果的に表しています。

人語を喋る動物たちが次々に出てきては行列に加わり、みなユニークで朗らかなキャラクターたちなのですが、その明るさと背景の「森の暗さ」とがかなりのコントラストを成しています。
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一見楽しいパーティー行列なのだけど、ちょっと足を踏み外したら、背景の森の暗がりに迷い込んで出てこれないのでは…?無意識のうちに、読者はそんな危うい感覚を覚えていきます。

森の中、という牧歌的なタイトルがつけられてはいるものの、大人の目線で読めばこの森は人間社会の比喩、一寸先は闇なのであって、その暗さの中に一体何がかくれているのかは誰にもはっきりと予測がつかない…そんな見方をすることもできます。

ここに、各動物たちや、その持ち物が象徴するものなどをたどっていけば、ものすごく難解な読み解きのできる絵本である、とも言えます。

不思議な雰囲気の中に漠然とさまよってもよし、ひとつひとつの謎を丹念に調べて行ってもよし。「もりのなか」は時間をかけてゆっくりと味わえる、大人向けの絵本としてもおすすめです。

『引用:もりのなか 作・絵:マリー・ホール・エッツ 出版社:福音館書店』

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