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名作絵本は数多くありますが、香りや音色を感じる絵本は少ないと思います。
「なつのいちにち」は、ストーリーはとてもシンプルなものです。
夏の暑い日、男の子は山を目指します。ただ、それだけのお話しなのに、この絵本からは夏の香りや音を感じる事が出来るのです。
そして、夏特有の暑さや、男の子の息づかいすら分かるような気がするのです。
子供の頃の夏は、一年の中でも特別な日でした。
祖父母の家に行き、風鈴の音色を聞きながら過ごしたり、自分の背丈ほどもある草原を走り回ったり、普段とはかなり違った日を過ごした日々は、大切な宝物です。
夏には夏の香りや音があります。
アスファルトを照らす太陽がジリジリと音を立てていた事や、かき氷りの冷たさに、花火の煙と香り。
夏の思い出は尽きる事がありません。
不思議なもので、記憶というのは香りや音で思い出すものです。
懐かしい香りや音により、その時の雰囲気や情景が思い出されるのです。
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「なつのいちにち」は、誰もが幼い頃に体験したであろう記憶を思い起こさせてくれる名作といえます。
そして、もちろん魅力は絵本そのものにもあります。
鮮やかな色合いの中で、躍動感溢れる男の子の姿は、気が付くと私達を夏の世界へと連れていってくれます。
気が付くと、自分も男の子と走り回っているような錯覚になるのです。
一番最初にページを開いた時から、この本には夏が溢れていました。
季節によって変わる香りや音色を、この絵本は見事に表現しているのです。
そして、読み終えた後には目を閉じて深呼吸をすると、夏の爽やかな香りが辺りを包んでいるような錯覚になるくらいです。
子供の時には、夏の一日はまるで永遠に思えるぐらい長いものでした。
大人になっても、なぜか夏がくるとワクワクするのは、この特別な日をいつまでも忘れられないからだと思います。
忙しい毎日に追われる中。
時には「なつのいちにち」を開いて、幼い頃に戻ってみるのも良いものだと思います。
引用:なつのいちにち
作:はたこうしろう
出版元:偕成社