NO IMAGE

十人十色のストーリー、文字なし絵本・かさ *大人が読みたい名作絵本*

スポンサーリンク



「絵本って文字を読むためのアイテムでしょう」そんな頭でっかちな想いを抱きながらページをめくると、あっさり裏切られてしまうのがこちらの名作絵本。かさは初めから終わりまでイラストのみで綴られた、超ユニークな絵本です。使われているカラーは、基本ブラックと赤のみ。お父さんを駅までお迎えに行く小さな女の子の道すがらが、温かく描かれています。お友達の親子と出会ったり大きな歩道橋を渡ったり、小さな女の子にとっての家から駅までの道は、大人が想像する以上に大きな大冒険。ページをあやつるうちに、いつしか女の子を見守る母のような大らかな気持ちへ。「女の子がんばれ~、早くお父さんに会えますように!」ついこぶしをぎゅっと、握りしめたくなります。

作者でもある太田大八さんは2016年に亡くなられているのですが、長崎出身の画家として色々な活動を続けてきたその世界では著名な方です。多摩美術大学を卒業したあと一般の企業に入社しますが、たまたま会社の出張で訪れた広島で8.6の原爆に行き当たります。戦後まもなく移り住んだ東京の自宅近くで、偶然再会したのが当時小さな出版社を営んでいた中学の同級生。中学時代からイラストが得意だった太田大八さんは、アルバイト気分で絵本の挿絵を描いたのがデビューのきっかけだったとか…。
スポンサーリンク



太田大八さんは生前とある雑誌社のインタビューでこう答えています。「かさは、見ている人が自分だけのストーリーを発見する作品。何かを感じてもらうためにつくった作品です」と。

ネットが発達して、ともすると何も自分で考えなくてもスピーディに日々が流れていく、ありがたい時代。お休みの日はチャットやLINEで会話を済ませ、誰と逢わなくても話さなくても1日をラクに終えることもできます。「何かをじっくり考えること」そんな貴重な体験をゆっくりせずにいると、ココロの中にいつしか塵やホコリがたまって苦しくなることも…。早すぎる時代の流れに「待った!」をかけたいとき、かさは小さな癒しを与えてくれます。

引用:{絵本名} 作:太田大八 絵:太田大八 出版社:文研出版

スポンサーリンク
>