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りんごのきは日本ではあまりお目にかかれないチェコスロバキア出身の作者が描いたステキなお話です。正方形サイズの絵本は、大人が持ってもしっくりくるサイズ。重たすぎずかといって軽すぎない。疲れた大人を癒してくれるコンパクト絵本です。
物語りの主人公は小さな坊や。庭に植えたりんごの木が冬から翌年の秋にかけて、移り変わっていく様子がほのぼの描かれています。猫やハリネズミ・犬や鳥など、小さな動物たちも度々「こんにちは」と顔をのぞかせます。
奇抜なカラーは一切抑えて、すべてが柔らかいトーンをつかって描かれた柔らかいお話。絵本の中には戦争や争い、ケンカなどの不穏な空気はひとつもありません。イライラした落ち着かない気持ちでぺージをめくっても、いつしか絵本の世界に手をひかれて、最後にはどんな大人もニッコリ笑顔になってページを閉じてグッスリ眠れる…そんな素敵な魔法が込められています。
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男の子はりんごの木に早く赤い実がつかないかと、心待ちにしています。ページを読み進める私たちも同じ気持ち。男の子と自分を重ね合わせて読み進めることができるため、ほのぼのとしたなかにも「小さな達成感」を感じられる作品です。
小さなころはカブトムシやハムスターを育てるのに一生懸命だった私たち。大人になると毎日の仕事や家事に追われて、そんな小さな達成感や喜びが見えにくくなることがあります。SNSが発達して1分前の出来事も、ネットを通してキャッチできることが可能になった世の中。誰もがゆっくり丁寧に日常を送ることより、コツコツ気ぜわしく生きることに慣れてしまっています。周りの反応ばかり気にしすぎて、本来は持つべき「自分だけのこだわり」を捨ててしまっているのではないでしょうか?
男の子とりんごのき、たったそれだけのシンプルなお話なのにピュアすぎる展開に大人の私たちが逆にウルウルしてしまう…そんな感慨深い名作絵本です。
『引用:{絵本名} 作:エドアルド・ペチシカ 絵:ヘレナ・ズマトリーコバー 出版社:福音館書店』