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「アンジュールある犬の物語」は、ある犬が捨てられるシーンから始まります。犬はやがて歩き出します。
この物語は、悲劇から始まります。信頼していた飼い主に捨てられて、どれだけ犬は心細かったでしょう。犬の気持ちを考えた時に、胸が締め付けられる思いでした。
きっと犬は飼い主に捨てられたとは分からなかったと思います。
「どうしておいていくの?」
「どこへ行ってしまうの?」
「おうちへ帰りたいよ」
台詞のない絵本なのに、そんな犬の心の声が聞こえてきそうでした。そして、犬は諦めます。きっと自分は捨てられたのだ。もう、愛してはもらえないのだと、犬は分かってしまったのです。
読み始めると、悲劇としか思えませんでした。でも、この物語は本当に悲劇なのでしょうか?
飼い主の元で暮らす事だけが犬の幸せでしょうか?
愛してくれない飼い主の元で、寂しい気持ちを抱えながら生きるよりも、自由になれる方が犬にとっては良いのではないでしょうか?
犬は、これで自由なのです。好きな時に、好きな場所へ行く事が出来るのです。
文字がない絵本というのは、様々な事を想像させてくれます。
絵本の中に登場しない場面ですら想像させてくれるのです。
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例えば、犬を捨てた飼い主は、なぜ犬を捨てたのでしょう?
あれだけ可愛かったのに、愛情がなくなったのでしょうか?
それとも、本当は捨てたくなかったのかもしれません。犬の前から走り去る車の中で、飼い主は笑っていたのでしょうか?それとも、泣いていたのでしょうか?
この絵本は、様々な方角から考えさせてくれる絵本です。
そして、もう一つの魅力は、その鉛筆のみで描かれた世界です。単色なのに、なぜか様々な色を感じる事が出来るのです。そして、様々な感情を感じる事が出来るのです。
名作というのは、多くを語らないものなのかもしれません。文字などなくても、説明などがなくても、読んでいる人に伝わるというのが、名作の魅力なのではないかと思います。
引用:アンジュール ある犬の物語
作:ガブリエル・バンサン
出版元:BL出版