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ものごころが付くかどうか…というくらいの幼い時分は、誰も超能力が使えていました。いるべき所で透明になれ、そして瞬時に現れる能力!急に出現してお父さんお母さんをびっくりさせる、あるいは逆の事をしてもらっては楽しんでいた時代があったのです。覚えていませんか?「いないいない、ばあ」というあの遊びは、実は『不在』と『有在』を行き来する、きわめて不思議な展開の遊びだったのです。
くまちゃんや、こんこんぎつねが次々に「いないいない…」とかくれてはばあ、と出現するのに合わせて、赤ちゃん自身もいないいないばあを実践するようになっている、松谷みよ子さんの赤ちゃん絵本の傑作が「いない いない ばあ」です。
顔を両手で隠しておいてから、ばあっとそれを開いて表情を子どもに見せる遊びは、ほぼ全世界的に存在します。ごく簡単に誰にでもできる「あやし遊び」の一つですが、その裏には少し深い意味があります。
いないいない、と顔を隠すのは「不在」ですが、最後には必ず「ばあ」と出て来る、つまり帰って来るというのは、お父さんやお母さんの姿が見当たらず、不安になている子どもに対する「でも、必ずばあと出て来るはず!」という観念づけでもあります。
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今は姿が見えなくても、大切な人は必ず自分のところに帰って来る、自分はひとりで置き去りにされたのではない…という事を、無意識のうちに確認する役割がある遊びなのです。もう少し年代が上がって来ると、今度はかくれんぼに発展していきます。
そんな意味付けのある遊びを紙上につづったこの名作絵本は、初版発行された昭和42年当時の昔なつかしいタッチでつづられています。ですが、言い回しのリズムのよさ、そしてどうぶつ達の「ばあ」と出て来るユニークな表情につられ、各世代の赤ちゃんや子どもたちに大いに楽しまれ、親しまれてきました。この絵本をきっかけに、手遊びを始める赤ちゃんも少なくはないでしょう。メッセージの普遍性、構成のシンプルさ故に、いつまでも色あせない一冊として、新しい世代に継がれてゆく作品なのです。
『引用:いない いない ばあ 作:松谷みよ子 絵:瀬川康男 出版社:童心
社』