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お絵描きから紡ぎだされたあおくんときいろちゃん、絵の具のしずくが世界を作ります -大人が読みたい名作絵本-

子どもに初めて絵の具を持たせた時にこんな絵を描いたかなと、一番に思い浮かべました。

小柄な丸に「あおくんです」と書き出しがあり、命が吹き込まれたかのようです。大きさから想像すると、あおくんは幼稚園の年長さんぐらいでしょうか。

あおくんのぱぱとままも青色で、ぱぱは少し丸みを帯びた大きな形、ままはほっそりとした縦長の形をしています。太っ腹なぱぱとキレイ好きなままの性格が表れているようです。

あおくんは仲良しのきいろちゃんと遊びたくなり、お留守番の約束を忘れて外に飛び出します。

黒一色の中に一人いるあおくんは、きいろちゃんに会えず不安を感じているようです。赤一色の時は、車が多い横断歩道のような小さい子一人では危ない場所にいるように感じました。

そのため、あおくんがきいろちゃんに会えた時の嬉しさは大人でも共感でき、嬉しすぎて二人が重なってみどり色になったのも頷けるのです。重なり具合は手を繋いでいるように見え、一つになった小さい丸は仲の良いお友だちとギュッと抱き合う子どものように見えます。

大人になった自分がこの絵本から学んだことは3つあります。

1点目は、子どもの声に耳を傾けているか?という事です。

ぱぱ達はあおくんときいろちゃんの変化がわからず「うちのあおくんじゃない」と言います。小さい二人の悲しみの大きさそのままに、涙の粒も大きく、とうとう涙だけになってしまった時は切なくなりました。

そして以前自分の子どもが一生懸命説明したにもかかわらず、自分はウソをついていると思われて叱った時の事を思い出しました。子どもが大きくなって忘れかけていたのです。

この本をきっかけに、大人のルールに当てはめて子どもに接していないか、時折思い返してみたいと思います。

2点目は、ぱぱ達の大らかさです。

あおくんに再会できたぱぱ達は、きいろちゃんも抱っこして自分もみどりになりました。自分の子だけでなく他所の子どもにも分け隔てなく接する優しさや、自分がみどりになってもワクワクするユーモアは、気持ちや時間に余裕が無くなりがちな慌ただしい子育て中にこそ、忘れないようにしたいです。

3点目は、色と形だけで物語を作る表現力です。

まず、色を合せた時の変化を学ぶことができます。赤とオレンジ色のお友だちが重なった絵もあり、子どもが様々な色の組み合わせに興味を持ちそうです。

さらに自由な形によって、明確な輪郭が無くても様々な表現ができることを教わりました。隠れんぼ遊びに使われた黒い模様は、大きな木にも迷路のような小道にも見えました。

赤や茶やペールオレンジの色とりどりのお友だちは、世界各国の人々の髪や肌を連想させます。ページの隅に横たわる丸い形は、本当に遊び疲れて休んでいるようでした。その時々や人それぞれで絵の感じ方が異なり、自由さや面白さや不思議さがあるのです。芸術家である作者の表現力の豊かさを改めて感じました。

なぜ他の色ではなく、青色と黄色なのか?

2色を合せてできる緑色は、森や山などの自然を感じさせ、心を穏やかにします。

親同士も嬉しくなってみどりになるシーンは、平和を願う作者の思いが込められているようです。もし一斉に皆が“みどり”になったら。今現在も地球上にある争いが一瞬でも止みそうです。

戦争に巻き込まれる危険性が無いとは言えない今後の日本でも、子どもの心に仲良しのみどりを教えてくれ、大人に何らか考えさせるこの絵本は、貴重な存在です。

「あおくんときいろちゃん」が名作たるゆえんは、絵の具のしずくからできたお話に平和を願う世界観と創造力が込められている所だと思います。

引用:あおくんときいろちゃん 作・絵:レオ・レオーニ 訳:藤田圭雄 出版社:至光社

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