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読む方によって賛否が分かれやすいのが、あくたれ ラルフ。タイトル通り立派なあくたれの一味である、ピリリと辛口の猫が主人公の絵本です。イタズラというには度が過ぎる数々の悪事をはたらくラルフ。けれども飼い主さんは、いつもぎゅっとラルフを抱きしめます。「あれ?許しちゃって大丈夫?」と思いながら読み進めると、最後にはとんでもない大どんでん返しも待っているという痛快サクセスストーリー。気持ちの良いアップテンポのまま、するする読める名作絵本です。
このお話がなぜ賛否を分けているかというと、読む人によってきっと心の琴線に触れるパーツがそれぞれ異なるから…。周囲の方と何不自由のない生活を送っている、いわゆるココロが満たされている方は、もしかしたら期待どおりの結末を迎えられないかもしれません。
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けれどもお子さんの不登校で悩んでいたり、嵐のような思春期にどう対応して良いか戸惑っていたり、恋人とのもつれや社会の人間模様に付いていけないと感じたとき…いわゆる「心が疲れていると感じたときほど」得るモノがとても大きな作品です。「なぜ私だけ不幸せなの?」そんなときに、手を差し伸べてくれるのがこちらの絵本です。
自己中心的でマイペースなウルフの暴れっぷりを見ていると、小さな鳥かごの中でぎゅっと小さくなって生活している自分が面白おかしく思えてきます。ココロにモヤモヤがあったら、ときには思いきり吐き出してイイ。我慢なんかしなくてイイ。マイナスになっていた気持ちがプラスの方向へ流れていく、そんな愉快な物語になっています。
アメリカ生まれの作者ジャック・ガントスは、あくたれラルフの他にも「ぼく、カギのんじゃった!」「ホールインマイライフ」など、日常の困ったトラブルに訴えかける本を多数出版しています。柔らかくキレイな優等生タイプの絵本が多い今の世の中、あえて落ち着きのない子や社会のレールから外れてしまったモノに着目し、ありのままの社会を伝えているジャック・ガントスの本たち。今までの絵本の常識をくつがえず、素晴らしい本です。
『引用:{あくたれ ラルフ} 作:ジャック・ガントス 絵:ニコール・ルーベル
出版社:童話館出版』